大西健丞 インタビュー記事 発行:リクルート
※紙面をもとに再構成したもののため、本文は同一ですが、図表を割愛するなど構成内容を一部変更しています。
誌上講義「よのなか学」第3回
国際NGOの現実
「アールティーチャー」2006年6月発行より
(転載はお断りします)
今月の講師:大西健丞さん(「ピース ウィンズ・ジャパン」統括責任者)
国境を越えて活動する非営利の民間団体、NGO。かつてはボランティア=無償というイメージが強かったが、ここ数年で国内のNGO環境は飛躍的に成長を遂げ、新たな「職業」としてNGOを選択する人も増えてきた。NGOで働くとはどういうことなのか?国際人道支援分野で活躍する代表的NGO「ピース ウィンズ・ジャパン(PWJ)」の統括責任者・大西健丞氏に話を聞いた。
取材・文/岩崎眞美子 撮影/大平晋也
――NGOを仕事として意識したのはいつでしたか?
「元々NGOで働きたいとは思っていましたが、93年に初めてイラクに行き、現地で活発に活動していた海外のNGOを見て驚きました。事業として非常に完成されていて、日本のNGOとは全然違った。この違いは何かとずっと考えていたんですが、それを痛感したのが、99年のコソボ紛争の時です。政府のバックアップを受けている欧米のNGOは迅速に支援が行えるのに、日本には緊急時にNGOを具体的に支援する制度がなかった。当時、ODA(政府開発援助)額は世界一と言われていた。いくらお金があってもそれを有効に使うことができないのでは意味がない。おかしいと思いました。その憤りが、その後の原動力になりました」
――その後「ジャパン・プラットフォーム」(図参照)を立ち上げられましたが、状況は変化しましたか?
「社会的インフラが整いだしたことで、活動状況もだいぶ改善されました。とはいえ財政は常にシビアです。NGOは企業と違って銀行からの融資や企業からの出資が受けにくく、政府からの助成金もあるとはいえ、運営活動費の基本は寄付や会費です。最近はフェアトレードビジネスなども重要な資金源となっており、NGOが企業を立ち上げて連携し成功した例も出ています」
――職業としてNGOを考えたときに収入面なども気になりますが。
「ここ数年で社会的な環境も整ってきたこともあり、ある程度名の知れたNGOならば、同じような規模の中小企業と比べて高くはなくとも、低すぎるということはなくなってきている。今の高校生が社会に出る頃にはさらに状況はよくなっていると思います」
――PWJでのキャリアプランは?
「入って半年くらいは、東京の本部でサポート業務をしてもらいます。その後、先輩の指導の下で、比較的危険が少ない地域から赴任してもらいます。中東など紛争地域に行くのは相当経験を積んでから。人によって差はありますが、だいたい1〜2年海外に出たら、次の1〜2年は国内の業務を担当します。現場にも東京にもそれぞれの論理があるので、常に巡回していないと意識も固まってしまい、全体の活動がバラバラになってしまうんです」
――大学進学は重要ですか?
「不利にはならないでしょう。志望者が全体に増加している中、最近は大学院卒者が目立ちますが、高卒者もいます。同年齢ならば、院生の新卒者と高卒の社会人経験者なら後者の給料が高いこともある。特定の技能、分野がある人は強いです」
――NGOで働くために一番重要なことはなんでしょう?
「社会への関心の高さももちろんですが、基本的には外国語が重要ですね。僕が高校の先生なら大学に行く前に海外に行けといいます(笑)。18歳までに海外生活を体験した人は語学の身に付き方が全然違います。海外で会議に出るのが必須の仕事なので、やはり外国語は重要です。さらに言うなら、ベンチャー精神も重要でしょう」
――自分で環境を変えていこうという意識ですね。
「今は普通の企業も、入ったからといって会社がずっと安泰とは限らない。それはNGOも同じですが、雇用されることを前提で考えるよりは、自分でいつか団体を立ち上げるくらいのつもりで、勉強のためにNGOに入るのもアリだと思いますよ。終身雇用という考え方はNGOにはないですからね」
【今月のよのなかポイント】
● 語学が何より重要!できれば18歳までに海外生活の体験を!
● 学歴はさほど関係ナシ。専門分野、特技があれば強みになる!
● 勤務は海外と日本を巡回。広い視野が育つ!
● 社会への関心の高さ、ベンチャー精神も必要!
■ NGOの国際人道支援活動を支える「ジャパン・プラットフォーム」概略図
(本誌に掲載された図は割愛しましたが、ほぼ同じ内容の図がこちらからご覧になれます。 本文にもどる )
【ジャパン・プラットフォームとは】NGO、経済界(企業)、政府が対等なパートナーシップの下、三者一体となり、それぞれの特性・資源を生かし協力・連携して、難民発生時・自然災害時の緊急援助をより効果的かつ迅速におこなうためのシステム。外務省、日本経団連の支援を受け00年に発足。
(転載はお断りします)
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